着物姿の人に、どんなイメージを持ちますか?
「おしとやか」「上品」「大和なでしこ」——
あるいは「アバンギャルド」「モード系」「コスプレ」なんて言い方もあるかもしれません。
でも、私たちの帯留を選ぶ人たちは、そのどれにもすっきりとは当てはまりません。
彼女たちは、声をあげて笑うし、よく歩きます。
ときにはライブで体を揺らし、ときには居酒屋で何気ない乾杯を交わす。
ちゃんと動きまわる日常のなかに、着物を自然に取り入れている。
決して「見せるため」でも、「着物好きアピール」でもなく、
ただ誰か大切な人と過ごす時間のなかに、静かに帯留を添えている——そんな人たちです。
ある雨の日のこと。
「今日はちょっと憂うつだなあ」と思いながら、でもなぜか足は出かける準備をしている。
傘をさして小さな商店街を抜けていくと、ふと思い出す。
そういえば、あの子に久しぶりに会えるんだった。
約束もしてないけど、きっと喜んでくれる店がある。
乾杯の最初の一口がすこし沁みるような、そんな夜になりそうだ。
きっと彼女は、そんな日にも着物を選ぶ。
それは「おしゃれ」でも「気合い」でもなくて、「今日という日に気持ちを添える」ための、ささやかな意思表示。
帯留は、その日の気持ちの“粒”のようなものです。
たとえば、七宝焼の小さな光が、雨粒と一緒に静かにきらめく。
「ああ、今日これをつけてきてよかった」と、道すがら自分にだけそっと思う。
それは誰に見せるでもないけれど、心を外に向けて開いてくれるきっかけになる。
私たちが目指しているのは、そんな装いに寄り添う帯留です。
「歩いて、笑って、乾杯する日の装い」とは、
つまり、自分が自分らしくいられる場所へ向かう日のこと。
気のおけない友人、パートナー、あるいは母や妹と——
誰かと笑い合える時間を、自分らしい身なりで迎えに行く。
着物だからって、かしこまる必要はない。
むしろ、自由に動けることや、居心地の良さを大事にしたい。
でもそのなかに、ほんの少し「今日はいい日になる気がする」という予感が宿っている。
帯留は、そういう日の始まりにそっと背中を押す存在でありたいと思っています。
「着物って、もっと自由でいいのかもしれない」
そう思えるきっかけが、帯のあたりにそっとある。
今日あなたは、どこへ行きますか?
誰に会って、何を話して、どんなふうに笑いますか?
雨の日でも、心が前を向く。
そんな帯留を、これからもつくっていきます。