「気品あふれる美人」が着る着物

「気品あふれる美人」が着る着物

こんにちは。&ENAMEL店主のアユカワです。

東京・広尾にある山種美術館にて、【特別展】生誕150年記念『上村松園と麗しき女性たち」が開催されています。

先日、東京出張の際に見てきました。


画像


 
上の写真は実際に写真撮ってOKだったもの。最近は増えてきてます。

 
 
上村松園は女性で初めて文化勲章を受章した日本画家です。絵画をどう見るかというと、既に有名な画家の未発表習作が見つかったとか、オークションで高値が付いたとか、いや実際に見て自分の感性のままに受け取るべきだとか、いろいろありますが…。
 

 

「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵」

アユカワは松園が大好きです。

彼女の素晴らしいところは、「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵」を描こうと生涯努力した、ということなんだと思います。

ご本人はそんな、絵だけ描いていれば良いお嬢様とかではありません。母子家庭で育ち、自分も息子(のちの上村松皇)を一人で育てたたくましい女性でした。

女性が絵をかくことにいろいろ批判はあったみたいだし、描かれる女性像は古いと言われてその中で試行錯誤した証言も残っています。

 

けどとにかく、「崇高な精神から崇高な画が生まれる」という意識にノックアウトされています。かっこよすぎ。


画像

美人画に描かれる女性の着物

明治から昭和にかけて生きた人ですが、美人画に描かれるのは江戸の女性も結構います。帯留は江戸後期にうまれたのですが、上の写真(「姉妹」1897-1906)でもつけていますね。

着物の流行も絵に取り入れています。帯から下の部分にのみ柄がある「腰高」という着物が着られるようになったのでそれを描いたり、衿に掛ける小さめの布(鬢付け油で汚れないようにだそうです)を描いたり(「庭の雪」1948)。


画像

コーディネートがすごい。好きだったんだろうな、と思う配色(緑と赤の着物の重ね着)を結構描いてます。それも良い。

 

着物の柄は実際に染めているような質感で、藤の花の模様なんか本物の友禅染みたいに見えました。江戸時代の着物の移りかわりや、髷の研究もしていたそうです。そのわりにご自分の髪にはあまりこだわっていない、という言葉もありました。

また眉についての言及も。筆の先少しでまったく変わってしまうのでこだわって描いているとありました。

個人的には表装(掛け軸として仕立てること)にも驚きました。絵の額装や表装は別の人がすることも多いはずですが、松園はご自分で表装のための裂地を選んでいたそうです。

୨୧‥∵‥‥∵‥‥∵‥‥∵‥‥∵‥‥∵‥୨୧

わたし自身が、こういう張り詰めた空気が好きなのかもしれません。

美にはいろいろあるけれど、妖艶なものをそぎ落とし、気高く、くもりのない精神から生まれる美が、私の求めるものと合うのかも。

会期は今週末27日(日)まで。

平日はけっこう空いていて、客層も落ち着いていてゆっくり見られましたよ。お近くの方はぜひ。


 


菊屋さんコラボの和菓子もおいしそうだったが、時間切れでスキップしました。こういうの目当てで行ってもいいですよね。



୨୧‥∵‥‥∵‥‥∵‥‥∵‥‥∵‥‥∵‥୨୧


 


全くの余談ですが、このあと三菱一号館美術館の「ルノワール×セザンヌ」にも行きました。

ふたりとも油絵だし、松園とは全然ちがうけど、やっぱすごいよね。

先日Xで、「絵のテイストは攻撃力の高さ、画力は命中率の高さ」みたいな投稿をみました。

松園のテイストが自分の癖にささるのはそう。だけどルノワールとセザンヌは画力の暴力でぶん殴ってくるっていう感じでした。

←次の記事 指摘してくれる先輩のこと
前の記事→ 歩いて、笑って、乾杯する日の装い

コメントを残す

コメントは公開前に承認される必要があることにご注意ください。