こんにちは、&ENAMEL店主のアユカワです。
最近、花はだいたい紫、アリの大移動、ツバメの低空飛行で梅雨までのカウントダウンを感じています。
「ツバメが低く飛ぶと雨」は、エサとなる蝶や虫の羽が湿気で重くなって高く飛べないから、ツバメも低いところを飛んで捕食してる…ということらしいです。へ~~~~
さて、大ニュースが飛び込んできました。
釉薬の原点、世界最古の合成顔料エジプシャンブルーのレシピが解明された
エジプシャンブルーといえば、少年王ツタンカーメンの黄金のマスクにも使われている鮮やかな青色の顔料。
古代エジプト時代、装飾のために使っていたトルコ石やラピスラズリなどの本物の宝石は、当たり前だけど高価で希少なものなので、なんとか人工的に青を作り出せないかと試行錯誤した結果がエジプシャンブルーなのです。
これにアユカワがなぜ反応しているかというと、七宝釉薬のもとをたどるとこれに行き付くからです。
先日こちらの記事でもご紹介した通り、七宝釉薬は二酸化ケイ素と酸化鉛をはじめとした主原料に、さまざまな鉱物を足して超高温で焼き、化学反応で色をつけています。
これを、約3500年前に生きていた人たちが作り出していたということ。
そして何に驚いているかというと、
古代エジプトから作られていたけれどルネサンス期のころにはその技術が廃れてしまって、「材料はだいたい分かるがレシピは分からない」となっていたのが、今回解明された!
ということなのです。
いや、だから何がすごいの?
となっているでしょう。お菓子作りに例えるのが簡単です、この場合。
パンケーキを作ったこと、きっとありますよね。
- 卵
- 牛乳
- 小麦粉
- 砂糖
この4つの材料を混ぜて焼けばパンケーキのできあがり。
これにチョコや抹茶などを混ぜればバリエーションができます。
さて、では
- 卵
- 牛乳
- 小麦粉
- 砂糖
でできる他のお菓子は?
クッキー・スコーン・パン・スポンジ・クレープ・クラフティ・ファーブルトン・たい焼き・シュークリームの皮・蒸しパン・ポップオーバー・カスタードクリーム…
ちょっと足したり引いたりすれば
ドーナッツ・フライの衣・卵焼き・プリン・ういろう・マドレーヌ・チーズケーキ・シフォンケーキ・アメリカンドッグの皮・クリームシチューのソース…
などなど、いろいろできるわけです。
そこで大事になるのがレシピ。
- 材料がそれぞれどれくらいの分量か
- 材料を混ぜていく工程はどうか
- 熱を加えるための機械と焼き時間はどうか
それぞれのお菓子のちがいは、この3点。
ダマがちょっと残った状態でフライパンで焼くのか、ハンドミキサーで滑らかになるまで混ぜたあと180℃のオーブンで30分焼くのかでできるお菓子は全く変わってきます。
ベーキングパウダーが小さじ1入っているかどうかでも、焼き上がりは全然違いますものね。
というようなことを、発掘した遺跡のかけらを分析して、
材料の配合をたくさん実験して、遺跡のかけらと同じ化学式の物質を自分たちで作り出すことに成功したのです。
ちなみに今回は焼成温度を1000℃に固定して実験したそうです。そしてサンプルによっては一度冷えたものを再加熱してみる、など。
エジプシャンブルーの色の揺らぎも解明された
ところで、「エジプシャンブルー」というのは古代から4色あったと認識されているそうな。
- 黒に近い青
- 水色
- 青緑
- 紫
原料として混ぜ込む基本の物質は銅なのですが、それをどう配合してどれくらい焼くかによってもバリエーションができます。
つまり、作ってみたあとの検証に時間がかかる。
X線解析、レーザーを当ててみる、電子顕微鏡で見るなどなどいろいろ測定して、遺跡のかけらと同じものを見つける作業です。
エジプシャンブルーの4色は、同じ製造方法でやっても結果として4色出ちゃう、ということだったみたいですが、今回の研究ではそのバラつきがどうして起こるかも突き止めたというので、研究者ってほんとすごいという感想しかない。
研究チームはスミソニアン博物館とカーネギー自然史博物館の人たちだそうです。
来年にはカーネギー自然史博物館にて、再現された「エジプシャンブルー」が展示されるとのこと。青い粉末を見ただけでは何とも、面白くはないと思いますが…。
元の記事はこちらからどうぞ。
古代エジプトの「青色」が千年の眠りから目覚める! アメリカの研究チームが完全再現に成功
合成および古代エジプトの青色顔料におけるプロセス変動と色の評価
英語ですが、画像がたくさんあってきれいです。
またお菓子のレシピを検索していた時にあまりに面白いので読んでしまったこちらも。
青い釉薬はですね、赤系と比べると高温で焼くんです。
失敗しにくいし、扱いが少しだけ簡単です。
銅を入れると青、鉄を入れると茶色、みたいに、化学が何も分からなかったら魔法に見えるかもしれません。赤の釉薬は、基本原料に金を混ぜたりして作るんですよ。面白いと思いませんか。
化学をひとつも知らない古代エジプト人が作ったものを使って商売し、お客様に喜んでもらっています。
ルーツを知りたいのは店主の趣味ですが、お店としての義務でもあると思っています。
楽しんで読んでいただけたら幸いです😊😊